カラーネガフィルム「Cinestill 800T」の魅力

初めてフィルムカメラを手にしたのは2019年の5月。一眼のミラーレスカメラを買って写真を本格的に始めてからちょうど一年が経った頃だった。

写真を始めた頃はカメラで撮るのが楽しくてとにかくなんでも撮った。風景も人もご飯や花も。色々な写真を見たり撮ったりしているうちに自分の中で撮りたい写真ができてきて、いつのまにか雨の日の写真をよく撮るようになっていた。
写真集やインスタグラムで見た写真も少なからず影響していたけれど、自分が何気なく撮った雨の日の写真を初めてみたとき高揚したのを覚えている。それがたしかカメラを買ってから1,2ヶ月の頃。それから現在まで雨の日にはよく写真を撮りに行くようになった。

雨の写真を撮るうちに、映画の一コマのような写真を撮れないだろうかと考えるようになった。その頃よく映画を見ていて、写真と映画が重なって見えたんだと思う。映画を見て感じる湿度や空気、重厚な雰囲気、そういうものが物凄くカッコよく感じた。

映画のような写真を模索しているうちに「ブラックミスト」というフィルターに行きついた。
映画でも使われるソフトフィルターで雨や夜と相性も良かった。僕はこのフィルターをレンズにつけてしばらくの間、雨の写真を撮っていた。

▷【ブラックミストNo.1】でシネマティックに街を撮る

ブラックミストを装着して撮った写真のコントラストや柔らかい光は僕の求めていたものに近かったけれど、少し異なっていた。ちょうどその頃、ソール・ライターの傘の写真や街の写真を見ていたこともあって自分の中でクラシカルな写真が好みなのではと。そう感じ始めていた。

「Cinestill 800T」との出会い

そういう経緯もあって僕はフィルムカメラを購入することにした。もともとフィルムカメラはいつか買おうと思っていたからいくつか目星をつけていて、結局コンパクトでよく写るCONTAX T2を購入した。

▷期限切れフィルム「AGFA ULTRA 100」とCONTAX T2

▷モノクロフィルム「ILFORD DELTA 3200」で深夜の街を撮る

CONTAX T2は街や日常を撮るときに本当によく使った。いつでも鞄に忍ばせておけるし、写りもいい。オートフォーカスがメインでダイヤルを回すだけで無限遠にピントを合わせることもできてピントの合わせづらい雨の日には最適だった。

CONTAX T2でフィルムを2,3本撮った頃、偶然インスタグラムで見かけた写真が「Cinestill 800T」で撮影されたものだった。僕はその写真がまさに自分の求めていたような写真だったから半ば興奮しながら、「Cinestill 800T」が売っている場所を探した。この頃の僕はまだ「Cinestill 800T」というフィルムをよく知らなかった。

「Cinestill 800T」最初の一本

心躍らせながら雨の中フィルムを詰めた。濡れることなんて気にしていなかった。とにかく早く写真を撮りたい。そう思って夢中でシャッターを切った。

撮っているときの感覚はデジタルで雨の日を撮るのとはまた違った。撮るものや見ているものはそれほど変わらないはずだけれど、素早く構えられる小さなカメラと「Cinestill 800T」というフィルムで僕は自然と写真を撮ることに没頭した。

フィルムだから当たり前のことだけれど撮った瞬間に確認することはできない。それもあってかデジタルで撮っている時より自由に撮っているような感覚があった。いつもならシャッターを切らない瞬間や場所でもシャッターを切っていた。

2,3本くらいをそんな風に自由に撮った。撮り方とか特徴とか気にせず、ただ楽しくてシャッターを切り続けた。

「Cinestill 800T」の魅力

数本撮って写真をじっくりと見た。光や質感、色やコントラスト。同じ雨でもデジタルで撮った写真とは異なっていた。

赤や青、黄色や緑といったこのフィルム独特の色彩。まさに映画のような色味で撮るだけではなく見ることも楽しめるのはこのフィルムの魅力だと思う。僕は何度も何度も写真を見返しては、次に撮るものや撮り方、どうすれば映画のような写りになるか、色々なことを考えているうちに「Cinestill 800T」というフィルムにどハマりしていった。

▷フィルムカメラでSF映画のような写真を撮ろうvol.1【Cinestill 800T 作例】

もう何本もこのフィルムを使ったけれど、毎回写真を見るのが楽しみで仕方がない。当たり前かもしれないけれど使うカメラやレンズ、気候や場所、それから時間帯でも撮れる写真は変わってくる。そうやって新しい発見があってまた使いたくなる。

これからは日常でもこのフィルムを使ってみようと思う。
きっと写真を撮るのがもっと楽しくなるはずだ。

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